軽音楽をあなたに

ジャンルにこだわることなくこれまで聞き逃してしまった音楽を改めて拾い上げる。抜けていたパズルのピースを埋めるような。

南佳孝 サウス・オブ・ザ・ボーダー

f:id:exoticmoog:20150228184301j:plain

1978年リリース

最近はYMOから端を発してジャパニーズポップスを聴く流れになっています。

あくまで流れに身を任せてサーフィンしているために到達地点はわからないのです。

今回、たどり着いたのはここです。南佳孝と言えば、はぴいえんどの解散後に

松本隆がデビューアルバムをプロデュースしたことがその筋の好きな人には有名

ですが、ここまでの流れでにより聴いたのはこのアルバムです。

1978年にリリースされた本作とトノヴァンの『ガーデニア』高橋幸宏

『サラヴァ』は必聴3部作です。

 このアルバムはYMO結成前の3名が参加しているだけでなく重要なキーマンに

なっています。坂本龍一が全編プロデュースだけでなくフェンダーローズを担当して

いてとても素敵な演奏をしています。編曲が素晴らしくセンスがよく南佳孝

楽曲を引き立てています。アルバムの最初から細野晴臣スティールパンが印象的

です。このアルバムは南佳孝の初期の名作としても有名なだけにとても聞き応えが

あります。

 

 

加藤和彦 あの頃、マリーローランサン

f:id:exoticmoog:20150221131827j:plain

 83年リリース。バブル景気の喧噪前の日本の幸福期と思える頃を象徴するようなムードがあるアルバム。トノヴァンのベストアルバムと言われることもあり聴きたいとずっと思っていましたがやっとたどり着くことになりました。バックは気心の知れた(豪華な)メンバーでリラックスした空気感が漂い聞き心地の良いアルバムです。曲は全て東京に住む男女の小さな物語というような内容なんですが安井と加藤の生活を綴っているような私小説的なものも感じます。36歳の加藤が"仕事に忙しく音楽を聴かなくなってしまった大人"に向けて作ったということらしいです。全体的なサウンドテーマは先取りした感覚だったということが想像できます。90年代渋谷系的なものはすでにここにあったということは発売が10年早かったということだと思います。

オフ・コース ワインの匂い

f:id:exoticmoog:20150215155042j:plain

 1975年リリース。オフコースの名前がまだ”オフ・コース”だったころ。2人だったころの名作としてファンの間では有名な作品です。オフコースと言えば80年代以降は熱狂的な女性ファンが多く社会現象とも言えるくらいのセールスを誇ったまさにスーパーグループでした。そのために音楽性は語られず、洋楽やロックが好きな人たちは距離を置いた存在でした。私は中1の12月にラジオで初めて”さよなら”を聴いたときにあまりの素晴らしさにシングル盤を買って何度も聴いたのを覚えています。B面の”汐風の中で”もすごい好きでした。しかし、学校ではオフコースが好きだとは恥ずかしくて言えなかったことを覚えています。そんなオフコースのライブアルバム”LIVE"をずっと聴いていたのですが、完璧なバンドアンサンブルで本当にかっこいいライブバンドだと思いました。

 ということで今更ながらロックバンドとして精査していくために初期の名作を聴いてみようと思った訳です。このアルバムはすごいですね。フォーク臭さはまったくありません。曲のタイトルにその臭さはあるもののそれは仕方ありません。初期のユーミンすら曲のタイトルに昭和臭さがあるものもあるのだから。サウンドはまさに日本のA&Mです。アンニュイなアコースティックギターやエレピサウンド。小田さんの声もクリスモンティスやニックデカルロを思い起させます。そしてセンシティブで洗練された編曲。軽く差し込まれたオーケストレイション。ビートルズのスタジオ制作没頭時期のアルバムやビーチボーイズの”ペットサウンズ”からの影響も見て取れます。初期のステージではマービンゲイのカバーもやっていたようです。このアルバムは制作時間500時間を越えてサディスティックミカバンドの記録を抜いたということですが本当に綿密に編曲されている2人の完璧を求める姿勢を深く感じるアルバムです。

 

高橋幸宏 NEURONANTIC(ロマンティック症候群)

f:id:exoticmoog:20150208184308j:plain

1981年リリース。中3だった私はこのレコードが出てすぐに購入しました。しかし特にキャッチーな曲もなく、音楽知識もないままに聴いたために全くこの世界が理解できませんでした。しかし中3にとってLPを買うというのは大変な投資だったために何度も聴いて理解に勤めました。今、わかって言えることは音楽を幅広く聴いて知識がないと理解できないということです。35年ぶりにCDを買って聴きました。前作の音楽殺人が寄せ集めの周辺メンバーでさくっと作ったものだとしたら、本作はアーティストとしてしっかりとコンセプトをたてて本気で作品を作ったのではないかと思います。アーティスト 高橋幸宏のデビュー作といっていいでしょうか。ロキシーミュージック、当時の英国インディーズからの影響が色濃く表れています。ロキシーのフィル、アンディの参加も見逃せません。先に出たYMOの"BGM"のオープニング曲である”BALLET"はこのアルバムに入る予定の曲でこのアルバムタイトルが"BALLLET"になる予定だったとか。確かにBGMの延長線上にあると思います。いわゆる時代の先端的な音だったのかなと思います。いいアルバムです。

イエローマジックオーケストラ/テクノデリック

f:id:exoticmoog:20150125174034j:plain

 1981年発売されたBGMに並ぶYMOの最高傑作です。このアルバムはオリコンチェートは4位でとまったことからもテクノブームが終わりコアなファンのみが買ったということではないかと思います。私もテクノブームでYMOが好きになった中学生ではありましたが、BGMまでは欠かさずに買っていましたが、テクノデリックは級友から借りてカセットテープで聴いていました。当時はとてもわかりづらく感じつつもこのアルバム全体に流れる当時の英国インディーズ風なダーク感やミニマムっぽさにはかっこいいという感覚は持っていました。その感覚を覚えていたことで30年振りに深く聴いてみようとCDを購入して何度もじっくりと聴いています。最近はもっとも聴いているCDです。

当時も今も気になっていて好きなのはエピローグです。製鉄所から採取した金属加工のようなノイズのサンプリングはサイバーパンクという言葉ができる前にも関わらず、ダークで猥雑なアジアの近未来(そう小説ニューロマンサーの世界やブレードランナーの舞台)を想像させる終焉感がなんとも言えない。アルバムジャケットは3人の顔ジャケットがこのアルバムの印象ですが、民族服の女性が移ったジャケットもありますよね。買ったCDは後者のものですが。このアルバムからプロデュースクレジットが細野晴臣YMOになっていますね。この制作のときは細野さんが体調悪くて教授がかなり貢献していたそうで。このころのアルバムって40分くらいだから集中して聴くことができるしアルバム全体のイメージを把握できていいですね。余談ですがTAISOの痙攣の運動という歌詞は何度聴いても笑えます。

高橋ユキヒロ/音楽殺人

http://ecx.images-amazon.com/images/I/519MJ9ZWNAL.jpg

 

 1980年リリース。YMO旋風真っ只中ということもあって話題になったことを覚えています。友人からカセットを借りて聴いた覚えがあるくらいでしたが、35年経って突然、聴きたくなってTSUTAYAで借りてきました。テクノポップの延長上にあると思いきや意外にROCK的なアルバムであることに驚きました。当時は理解できなかったけれど今は音楽の知識も増えて、このアルバムが当時のロンドンで流行っていたパワーポップやツートーン系スカなどをそのまま表現していることがわかります。ファーストアルバムがPARISをテーマにしていたのでこのアルバムではLONDONの最新の音を表現したのでしょうか?DEVO,ウルトラヴォックス、ELO,スペシャルズコステロ、ニックロウなどからの影響でしょうか。参加メンバーも当時のテクノブームの中心にいるメンバーが多数参加していますが、このアルバムはテクノが一番盛り上がったときにリリースされたアルバムだったと思います。

 

 

 

イエローマジックオーケストラ/BGM

f:id:exoticmoog:20150111110247j:plain

 1981年3月に発売されたYMOの最高傑作(次作のテクノデリックと双璧)と呼び名の高いアルバム。当時中学生だった私は予約して発売を待ち望んだ一人でありました。YMOはテクノブームとともに社会現象となりこのアルバムは予約だけで10万枚。すべての人が”テクノポリス””ライディーン”を求める中で見事な裏切りによってその後、コアなファンだけが残るということになりました。もちろん、中学生の自分にこのアルバムの深さを理解できるはずもなく振り落とされたファンの一人です。そんなBGMを30年以上経って再度聴いてみることにしました。1曲目のBALLETから最後の曲であるLOOMまで捨て曲なし。まさに名盤だということがわかる内容です。このアルバムを理解するには30年以上様々な音楽を聴いて理解力がないとだめだということです。このアルバムはProduce By Hosonoのクレジット最後と言われていますが、内容は3人の個性がブレンドされていて最後に細野氏による味付けの整いをしているように思います。ベストトラックというと”CUE"が人気ですよね。この曲はいろんな人がカバーしていたりしている。発売当時は"U.T"が テクノブームの延長戦を継承していて中学生には人気だったことを覚えています。私が好きなのは"BALLET"の憂いのあるヨーロピアンサウンド風なところ。ロキシーやイーノを知った後だからです。ミニマム、アンビエント、ヨーロピアンなものが吸収されてそれ以前のマーチデニー風エキゾ、アジア感、ノベルティ感が減ってアルバムにトータルコンセプトを持たせて大人っぽいかっこいいアルバム。最後の曲である”LOOM"はテクノデリックの序曲に聞こえBGMからテクノデリックが AB面ということなのではないかと勝手に思ってしまいます。