大滝詠一 イーチタイム
1984年リリース。
あの"A LONG VACATION"から3年後。
"EACH TIME"の時は邦楽に興味を失っていたから聴かなかった。
夏が似合わない人が日本人の夏の定番BGMとして崇拝される違和感。
別に夏のBGMの専門家ではない。
達郎も同様。
(以降、日焼けしたミュージシャンが現れ、夏サウンドを奏でることで
解決に向かっていく。)
このアルバムは流れとしては”ナイアガラトライアングルvol.2"が前に出ていたことで
存在が成り立つ。
"時計仕掛けのオレンジ"からここへの
”流れ”は線で繋がる。
ただ、ロングバケーションを越えられない。
だからこれ以降、
アルバム出せなくなるのも仕方ない。
南佳孝 サウス・オブ・ザ・ボーダー
1978年リリース
最近はYMOから端を発してジャパニーズポップスを聴く流れになっています。
あくまで流れに身を任せてサーフィンしているために到達地点はわからないのです。
今回、たどり着いたのはここです。南佳孝と言えば、はぴいえんどの解散後に
松本隆がデビューアルバムをプロデュースしたことがその筋の好きな人には有名
ですが、ここまでの流れでにより聴いたのはこのアルバムです。
1978年にリリースされた本作とトノヴァンの『ガーデニア』高橋幸宏の
『サラヴァ』は必聴3部作です。
このアルバムはYMO結成前の3名が参加しているだけでなく重要なキーマンに
なっています。坂本龍一が全編プロデュースだけでなくフェンダーローズを担当して
いてとても素敵な演奏をしています。編曲が素晴らしくセンスがよく南佳孝の
楽曲を引き立てています。アルバムの最初から細野晴臣のスティールパンが印象的
です。このアルバムは南佳孝の初期の名作としても有名なだけにとても聞き応えが
あります。
加藤和彦 あの頃、マリーローランサン
83年リリース。バブル景気の喧噪前の日本の幸福期と思える頃を象徴するようなムードがあるアルバム。トノヴァンのベストアルバムと言われることもあり聴きたいとずっと思っていましたがやっとたどり着くことになりました。バックは気心の知れた(豪華な)メンバーでリラックスした空気感が漂い聞き心地の良いアルバムです。曲は全て東京に住む男女の小さな物語というような内容なんですが安井と加藤の生活を綴っているような私小説的なものも感じます。36歳の加藤が"仕事に忙しく音楽を聴かなくなってしまった大人"に向けて作ったということらしいです。全体的なサウンドテーマは先取りした感覚だったということが想像できます。90年代渋谷系的なものはすでにここにあったということは発売が10年早かったということだと思います。
オフ・コース ワインの匂い
1975年リリース。オフコースの名前がまだ”オフ・コース”だったころ。2人だったころの名作としてファンの間では有名な作品です。オフコースと言えば80年代以降は熱狂的な女性ファンが多く社会現象とも言えるくらいのセールスを誇ったまさにスーパーグループでした。そのために音楽性は語られず、洋楽やロックが好きな人たちは距離を置いた存在でした。私は中1の12月にラジオで初めて”さよなら”を聴いたときにあまりの素晴らしさにシングル盤を買って何度も聴いたのを覚えています。B面の”汐風の中で”もすごい好きでした。しかし、学校ではオフコースが好きだとは恥ずかしくて言えなかったことを覚えています。そんなオフコースのライブアルバム”LIVE"をずっと聴いていたのですが、完璧なバンドアンサンブルで本当にかっこいいライブバンドだと思いました。
ということで今更ながらロックバンドとして精査していくために初期の名作を聴いてみようと思った訳です。このアルバムはすごいですね。フォーク臭さはまったくありません。曲のタイトルにその臭さはあるもののそれは仕方ありません。初期のユーミンすら曲のタイトルに昭和臭さがあるものもあるのだから。サウンドはまさに日本のA&Mです。アンニュイなアコースティックギターやエレピサウンド。小田さんの声もクリスモンティスやニックデカルロを思い起させます。そしてセンシティブで洗練された編曲。軽く差し込まれたオーケストレイション。ビートルズのスタジオ制作没頭時期のアルバムやビーチボーイズの”ペットサウンズ”からの影響も見て取れます。初期のステージではマービンゲイのカバーもやっていたようです。このアルバムは制作時間500時間を越えてサディスティックミカバンドの記録を抜いたということですが本当に綿密に編曲されている2人の完璧を求める姿勢を深く感じるアルバムです。
高橋幸宏 NEURONANTIC(ロマンティック症候群)
1981年リリース。中3だった私はこのレコードが出てすぐに購入しました。しかし特にキャッチーな曲もなく、音楽知識もないままに聴いたために全くこの世界が理解できませんでした。しかし中3にとってLPを買うというのは大変な投資だったために何度も聴いて理解に勤めました。今、わかって言えることは音楽を幅広く聴いて知識がないと理解できないということです。35年ぶりにCDを買って聴きました。前作の音楽殺人が寄せ集めの周辺メンバーでさくっと作ったものだとしたら、本作はアーティストとしてしっかりとコンセプトをたてて本気で作品を作ったのではないかと思います。アーティスト 高橋幸宏のデビュー作といっていいでしょうか。ロキシーミュージック、当時の英国インディーズからの影響が色濃く表れています。ロキシーのフィル、アンディの参加も見逃せません。先に出たYMOの"BGM"のオープニング曲である”BALLET"はこのアルバムに入る予定の曲でこのアルバムタイトルが"BALLLET"になる予定だったとか。確かにBGMの延長線上にあると思います。いわゆる時代の先端的な音だったのかなと思います。いいアルバムです。
イエローマジックオーケストラ/テクノデリック
1981年発売されたBGMに並ぶYMOの最高傑作です。このアルバムはオリコンチェートは4位でとまったことからもテクノブームが終わりコアなファンのみが買ったということではないかと思います。私もテクノブームでYMOが好きになった中学生ではありましたが、BGMまでは欠かさずに買っていましたが、テクノデリックは級友から借りてカセットテープで聴いていました。当時はとてもわかりづらく感じつつもこのアルバム全体に流れる当時の英国インディーズ風なダーク感やミニマムっぽさにはかっこいいという感覚は持っていました。その感覚を覚えていたことで30年振りに深く聴いてみようとCDを購入して何度もじっくりと聴いています。最近はもっとも聴いているCDです。
当時も今も気になっていて好きなのはエピローグです。製鉄所から採取した金属加工のようなノイズのサンプリングはサイバーパンクという言葉ができる前にも関わらず、ダークで猥雑なアジアの近未来(そう小説ニューロマンサーの世界やブレードランナーの舞台)を想像させる終焉感がなんとも言えない。アルバムジャケットは3人の顔ジャケットがこのアルバムの印象ですが、民族服の女性が移ったジャケットもありますよね。買ったCDは後者のものですが。このアルバムからプロデュースクレジットが細野晴臣+YMOになっていますね。この制作のときは細野さんが体調悪くて教授がかなり貢献していたそうで。このころのアルバムって40分くらいだから集中して聴くことができるしアルバム全体のイメージを把握できていいですね。余談ですがTAISOの痙攣の運動という歌詞は何度聴いても笑えます。